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「また診せて下さいね」、A先生ありがとう。

私は眼科にいい印象は持っていませんでした。「でした」と過去形にしたのはそんな嫌な思いを変えてくれるような出来事があったからです。それは退院後10年ほど経って眼科医のA先生と出合ったことが私の思いを大きく変えたのです。言葉は大切です。一つの言葉ですごく落ち込んでしまったり、逆に突然元気になったりと人の心は大きく揺れ動きます。人の言動には想像力が必要です。こう書いたら難しいように思えますがそんなことは決してありません。相手を思いやる気持ちがあれば普通に出来ることなんです。最近お偉い方の失言が多くて困りますよね。ちょっと偉くなったらまさに調子に乗ってしゃべりまくるようです。そんな時は相手を思いやる心などもう完全に忘れてしまっているんでしょうねえ。
話を元に戻します。このA先生との出会いは10年以上私が感じていた眼科への思いを一瞬にして変えてくれました。こんないい先生も居るんです。もしかしたらこんな先生が多数であって、私が以前出会ってしまった先生はごく一部なのかも知れませんね(ニコ)。さて私の眼科への思いを変えてくれた出来事をここで紹介してみたいと思います。

     「また診せて下さいね」
 「また診せて下さいね」、私はこの言葉を聞いてドキッとしました。それと同時に胸の奥が何かジ・ン・ワ・リと温かくなるような気がしたのです。私は診察室を出ながら今A先生が話してくれた内容とその語り口の柔らかさを必死に思い出そうとしていました。そしてその言葉の一つ一つをゆっくりと拾い集めて頭の中にしっかりと刻み込んだのです。
 突然の病で右半身がマヒした上、両目の光も完全に失ってしまってから早いもので丸十年、三年ぶりの眼科受診でした。十年ともなると精神的・肉体的にもかなり落ち着いて来ていて、今現在の私という者をごく普通に受け入れられるようになって来たとはっきり感じていました。病気直後あまりにもショックが大き過ぎて身体と心のバランスを一気に無くしてしまい、まさにこの世の不幸をすべて一人で背負ってでもいるように落ち込み泣いてばかりいた当時の私とは比べものにならない程立ち直って来ていたのです。それは当初まったくやる気のなかった私に陶芸・ワープロと手を変え品を変えとにかく明日の為に「私の道」を開いてくれたのがリハビリです。PT・OTを担当してくれたそれぞれの先生方の熱心な指導がなかったら、今の私は存在していないのです。まさに恩人でした。
 しかし、眼科だけは違いました。当初私を診察してくれた先生の印象が悪過ぎるのです。突然身体の自由と光を失ってしまった私の心はもう恐怖心だけでした。すがるような気持ちで眼科を受診した私にとってその先生の対応はただ冷たいとしか言えなかったのです。今から思えば回復する可能性のない患者に対して期待を持たせるような言葉は要らなかったのかも知れません。先生と私たち家族とはやはり考え方にかなりの温度差があったようです。とにかく当時の私としては「どうにかして治してやる」といった積極的な姿勢をもっと見せてほしかったのです。例えばこんなことがありました。入院中どうしても眼科の診断書が必要となった私は久しぶりに眼科を受診することになりました。それまでの対応でかなりの不信感を抱いていた私でしたが「もしかしたらちょっとでも…」といった微かな期待も正直あったのです。私は指定された時刻に看護師さんに車椅子を押してもらい、すでに外来の診察も終わってひっそりした眼科に到着しました。しばらくすると看護師さんが出て来て「先生は今手術中なのでちょっと遅れます。先生が来る前に少し検査をします」と言って私を診察室に入れました。すると突然私の頭に手を当てて「何か見える?」と尋ねたのです。これはペンライトを私の目に当てていたのです。それを理解した私は「いや何も」と答えたのです。すると「そう見えない。じゃこっちは?」ともう片方にライトを当てているようなのです。「何も」と答える私の言葉を待っていたかのように「そう、こっちも見えない。ハイハイ分かりました両方見えないね」と看護師さんは言ったのです。私は泣きたくなりました。それは「やっぱりか」という失望感もありましたがそれ以上に看護師さんのあまりにも機械的で冷たい対応がとにかく悲しかったのです。約一時間後やっと先生は現れました。待合室で待っていた私の前を無言で通り過ぎたのです。「そう変わりないの。じゃ診なくてもいいでしょう」と先程の結果を聞いたのか先生のやけに落ち着いた声が聞こえて来ました。出て来た看護師さんは「先生の診察はありません。診断書は書いて回しておきますから」とだけ言ったのです。そこへ追い討ちするように「一人で帰れる?」と看護師さんのお言葉。私は「看護師さんを呼んで下さい」と力なく言うのが精一杯だったのです。「この先生にしてこの看護師さん」でした。
 最近転勤して来たというA先生は続けてこう言ったのです。「今の医学の進歩はすごいものがあります。何か新しい情報を提供出来るかも知れませんからね…」。それで十分でした。私自身ここまで来て回復するなんてもう思ってもいなかったのです。A先生としてもその辺りを理解して言ってくれたのでしょうが、とにかく身にしみる言葉でした。初めて温か味を持った眼科医に出会ったような気がしました。中途失明者にとってはやはり心のリハビリが特に重要です。その時温かいケアさえあればそれから始まる立ち直りを賭けた辛い闘いもきっと大きな力で支えてくれるはずです。「あの時担当してくれたのがこのA先生だったらどう言ってくれたかなあ。また診せに来てもいいよね」、そんなことを考えながら病院を後にした私の顔はいつになく笑顔でした。

 
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未分類 | 11:29:38 | Trackback(0) | Comments(0)
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