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パソちゃんは私の立派な右腕です。
ワープロを使っての文章作りがいよいよ始まりました。最初何を書こうかと考えてもなかなか頭に浮かばないんです。いやー緊張しました。やっと「ありがとう」とか「こんにちは」など簡単な言葉を入れることにしたんですが、指がすんなり動いてくれないんですよね。「あ・い・う・え・お」で十分練習したはずなのに違うんです。頭に浮かんだ言葉をそのまま指でキーを押してといった一連の動作がスムーズに行かないんです。これはやはり音声が聞こえないことがどうしても気になりつい慎重になってしまっていたんでしょうね。早い話「考え過ぎ」なんです。それまであまりにもうまくすんなりと行き過ぎたんですよね。とにかくうまくやろうとか考えることがまずダメなんです。今はワープロ操作を覚えるということが大切なんです。間違って当たり前なんです。それを出来るだけ少なくするために訓練しているんですから。音声さえ聞こえたらすぐ訂正したらいいわけです。それは実際にやる時のことであって、ここでは割り切ってどんどんやるしかないんです。「そうだよね」、私は素直に反省しました。気負い過ぎて全身に力が入ってガチガチだったんです。考え過ぎ・気負い過ぎは良くありません。リラックスして集中、これですよね。
それからはスムーズでした。簡単な言葉を何度も繰り返し入れましてね。もちろんひらがなばかりです。いくつか入れ終わったらY先生を呼んで点検してもらい、間違っている箇所は訂正しました。Y先生は私が呼ぶ時以外は放っておいてくれましてね。私としても集中するためにはこの方が良かったんです。数日経つとかなり慣れて来まして、それからいよいよ文章作りに入ることになりました。ここからは漢字変換も練習ということでやりました。実際には必要ですからね。変換しても目的の漢字なのか当然私には分からないわけです。そこでここではその点は割り切って無視することにして、変換後最初に出て来た漢字をそのまま決定することにしました。作った文章をY先生に点検してもらいましたが、これは実に面白いものでした。日本語は漢字・かな混じりの文章で出来ていますよね。漢字には当然意味があるわけですからもし間違えたらすごいものになるんです。まったく予想もしていなかった漢字になっていたりして「おいおい何だよそれは」と思わず突っ込みたくなるようなものもありましたね(ニコ)。これがもし正式に作った文書だったとして笑って済まされるものであればいいんですけど、重要なものだったらそうは行かないですよね。目の見えない私としては誤字には特に注意する必要があると強く感じました。
書いた内容としては最近の出来事や病院食のメニューで「あれはうまかったよね」という食べ物についての話題が多かったようです(食いしん坊バンザイ!、ですね)。そうそうあの頃元熊本県知事の細川さんがナント総理大臣になってしまったことを書いた覚えがあります。いやーあれは本当にビックリでした。「詩」なんてヤツも柄にもなく書きました。振り返ると「よくあんなこと書いたよね」とちょっと恥ずかしい気持ちです。当時はもっと素直だったようで勢いだけでやっていたんでしょうね。普通の人に戻り素直な思いを忘れかけている今では、絶対に書けない内容です(反省)。書いた文章はフロッピーに保存しました。毎日呼び出しては文章を作り、終わったら保存して約1時間の訓練は終了といった具合でした。病室に戻ってからも明日は何を書いてやろうかと、陶芸同様私はまたまたワープロにすっかり夢中になっていたのでした。
退院して一年後、我が家にパソちゃんがやって来ました。すぐにでもと思ったんですけどその前にまず家での生活に慣れることが大切だったわけで少し遅くなりました。待っている内に「書きたい」という思いがドンドン膨らんで来ましてね。この病気について・家族・仕事・友達・そして入院中の生活・ドクター・看護師さんや病院スタッフ・リハビリ・患者さんたちについての思いをとにかく書きたかったんです。これはすべての人に感謝の気持ちをしっかり込めて「記録」として残しておきたかったんです。それは今この時点で書いておかないと後で大きな後悔をしてしまうように思ったからです。パソちゃんがやって来てくれてから私は一気に書きました。そして半年ほどかかってやっと書き終えた文章は400字原稿用紙で180枚ほどになりましてね。書き終えたら本当に「ホッ!」としました。ちなみにこの文章はそれから1年後「普通である事」というタイトルで自費出版してしまいましたとさ。
現在こうしてブログに書き込んだりEメールやインターネットを利用出来るのはこのワープロ訓練のお陰なんです。あの時ワープロなるものに思い切って挑戦して本当に良かったと強く強く思います。そして私の我がままに付き合って熱心に指導してくれたY先生には「感謝!」の思いでいっぱいです。そうそうパソちゃんにも感謝します。君の技術が私を救ってくれました。君が居る時代に視覚障害者になったということはまさにラッキーでしたよ。君が居ない生活なんてもう考えられません。君はまさに私の立派な右腕です。本当にありがとうね。
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未分類 | 15:05:14 | Trackback(0) | Comments(0)
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